事業承継

事業承継は財産、経営、人、想いといったものが複雑に絡み合った複合的な課題です。
財産だけの対策も、経営だけの対策ももちろん有効ですがそれぞれのシチュエーションごとの課題を理解し、選択することがよりより事業承継につながります。

事業承継の主な課題

 事業承継は、株式や事業用不動産、これらから生ずる税金対策といった「資産承継」と後継者育成・幹部育成・組織改革といった「経営承継」の2つの柱があります。
 また、非上場企業においても、親族による事業承継が50%を切っている中で、従業員への承継、外部へのM&Aといった形での承継も増えており、後継者の属性から引き継ぎ方を検討する必要があります。
各組み合わせごとに様々な課題を考えるきっかけとなればと思います。

1.渡す人 × 財産承継

 創業者や現オーナーの方の中心的な財産は会社の株式です。
 長年の企業活動への奮闘により生み出された利益が純資産として会社に蓄積されて、その結果株式の価値が高額になってしまい、事業承継時の税金が高くなるのが課題の中心となります。

【渡す方の財産上のお悩み・課題の例】
・自社株式の評価が高すぎるー自社株式の評価と節税対策
・親族内外に株式が分散していて後継者が困るのでは?ー分散株対策
・事業承継税制(納税猶予)を使うかどうか?
・退職金のもらうべき時期
・財産を渡してもいいけど、経営権はまだ維持したい
・事業用に使われている個人所有の土地やその他の財産ー個人財産の法人移転
・相続人が複数いる場合の相続方法、遺留分や納税資金の問題
・従業員や第三者へ事業を売却する際の当社の事業価値

これらの例は御社だけではありません!!非上場会社のオーナー様皆様の課題なのです。

2.引き継ぐ人 × 財産承継

 引き継ぐ方にとって財産は納税とともについてきます。また、会社とは借入金も一緒についてくるでしょう。今までの自分の財産を渡す創業者様の「承継に対する想い」と、親族だから又は会社を購入して引き継ぐこととなった後継者様の「承継に対する想い」は異なるため、同じ手法であっても受け取り方が異なります。

【引き継ぐ方の財産上のお悩み・課題の例】
・自社株式の評価が高すぎるー自社株式の評価と節税対策
・親族内外に株式が分散。叔父や従兄弟の株をどうしようー分散株対策
・事業承継税制(納税猶予)は税金がなくなるの?
・金融機関借入を利用した事業承継対策ー借入返済は自分の役割か?
・個人と法人の契約関係を整理したい
・兄弟姉妹との関係はー複数いる場合の相続方法、遺留分や納税資金の問題
・MBOの打診があったけどこれからやっていけるの?ーMBOスキーム

 財産承継の対策は主に渡す方主導で行われることが多数です。ですが、引き継ぐ方にも様々な考えがあると思いますので、渡す方がどのように進めていきたいかを理解し、場合にはよっては意見を言うことが大切です。

3.渡す人 × 経営承継

 渡す方にとって、会社は自分の人生をかけて育ててきたものですので、それを手放すことは容易ではありません。
M&Aの事業売却は気持ちの踏ん切りができれば、数年のフォローをもって完全に引き渡していけるものですが、親族への承継となるといつまでも「半人前」という意識があるかもしれません。

【渡す方の経営上のお悩み・課題の例】
・株は渡しても経営権は維持したいー種類株による対策
・社長は交代しても役員として見守りたい
・退職金は先にもらうor逆に退職金はいらないからずっと会社に関与する
・取引先の引継ぎをスムーズにしたい
・後継者を支える経営陣を育成したいー幹部候補育成
・引継ぎの計画を立てていきたいー事業承継計画の作成

 渡す方の第一歩は「自分と後継者はいろいろ違う」、「自分が会社を成長させていたときとは事業環境が違う」ということを理解することです。身内だからまだまだと思ってしまっても、個人個人能力もやり方も違います。また、高度成長期と安定成長・人材不足の今はでは時代背景も違います。

 違いを理解し、譲れる部分と譲れない部分を明確にし、一定のスケジュールをもって渡していく、そんな承継が理想です。

4.引き継ぐ人 × 経営承継

 引き継ぐ方にとって、「今後自分が会社経営をしていくんだ!」という覚悟のもと会社を引き継ぎものと思われます。
親族であれば「ゆくゆくは自分が引き継ぐ」という思いは会社に入ったときからあるものと思われますし、M&Aの事業を購入したからには今後の事業の経営・従業員の安定は自分の肩に乗ってきます。

【引き継ぐ方の経営上のお悩み・課題の例】
・引退した先代がいろいろ言ってくる
・先代の威光が強くて自信がもてない
・自分を支えてくれる経営陣を育成したいー幹部候補育成
・スケジュールをもって引継いでいきたいー事業承継計画の作成
・経営者になって今後の事業の展望を明確にしたいー事業計画の作成
・取引先折衝・金融機関対応を知りたい
・組織形態を変えていきたい

 引き継ぐ方の主なお悩みは「先代の存在」と「自分らしいやり方」の間でいろいろな軋轢が生まれることから発します。また、事業計画や金融機関対応、自分を支えてくれる人材をどう作るかといった現実的な課題もあります。

「想い」の部分の調整と「企業経営という現実」にどう対応するか?が引き継ぐ人のテーマといえます

当事務所の事業承継コンサルティング

 事業承継は大きく分けて、株式や不動産等の「財産の承継」と経営体制・組織体制の変化といった「経営の承継」の2つがあります。事業承継においては単に税金だけでなく、支配権や相続面、会社の継続的な成長を踏まえた対策が重要となります。
 当事務所では財産面では単純な暦年贈与による方法だけでなく、株価対策・相続税対策・現金化等による負担のない財産対策を、経営面では後継者様を支える経営体制構築を得意としております。また、これらの両面で組織再編や種類株といった方法もご提案しております。
 株価が高くて困っている、株式が分散してしまっている、段階的に息子に譲っていきたいがどうしたらいいか、といった会社様の課題に渡す方・引き継ぐ方の間を取り持ちながらサポートします!

財産承継のご支援

 財産の承継は「財産の評価が高い」「株式が分散している」「後継者が幼くてどのタイミングで承継していいか」といった課題があります。目に見えやすい「相続税対策」にとらわれてしまうと遺産分割や株式の議決権といったところで問題が生じやすくなります。
当事務所では財産承継の支援として
①分け方―財産をどう分けるか
②納め方―納税資金はあるか
③減らし方―節税対策
の順にお客様の状況にあった財産承継をご支援します。

法人株式評価・シュミレーション

 非上場会社の株式の税務上の評価方法は、会社の利益剰余金をベースに算定する「純資産価額方式」と国税庁が発表している業種別の上場株価と比較して算定する「類似業種比準方式」の2つを組み合わせて算定します。
相続税の申告ほど税理士の差がでにくい部分ではありますが、それでも慣れていない税理士ですと、各種評価でつまずいたり、誤ったりしがちです。
 当事務所では多くの算定実績に基づく評価は当然として、株価を下げるにはどうしたらよいか、どこまで下がるか、毎年の利益が積みあがったら将来の株価はどうなるか、といったところまで算出します。

株価引下げ対策提案・実行支援

 非上場会社の株式は決算期ごとに変化します。対策をしないままでいると毎年の利益で株価はどんどん上がっていきますが、一方で恒久的に株価を低いままに継続していく対策も困難です。
 当事務所では株式の算定方法を熟知しており、会社様の株式を移転したいタイミングに合わせて株価をコントロールすることにより株式承継実行のためのご提案と支援を行います。

分散株式対策提案・実行

 歴史を重ねてきた会社様の場合、相続や贈与の結果ご親族に株式が分散しているケースが多く見られます。株式は財産価値という財産権以外にも会社をコントロールするための議決権という機能が備わっており、いたずらに株式が分散されている会社様では社長や中心家のコントロールが効かない、といった問題が生じます。
 当事務所では、買取方法や買取価額、購入までのスキーム構築により分散した株式の集約をご支援いたします。

経営承継のご支援

 創業者様が一代で気づきあげてきた会社様の場合、ノウハウや営業・金融機関づきあい、組織の体制等が創業者様個人に帰属している会社が多くを占めます。一方で業界環境や経済環境は創業者様が会社を運営してきた時代から大きく変わっており、同じやり方で今後の数十年の会社の成長があるかどうかは不透明です。
経営の承継においては、「創業者様個人に帰属する経営力を後継者様に承継する」「後継者様を支える事業体制・組織体制を構築する」「後継者様を支える幹部候補を育成する」を目的に会社様のご支援を行います。

事業計画作成支援

 事業を継続していくためには事業計画の作成と見直しが必須であると当事務所では考えております。単なる数値計画の作成ではなく経営者様の想いや意思が込められているものでなくてはなりません。
 当事務所では、経営方針や理念、環境分析といった定性的な計画と損益計画に代表される定量的な計画の双方を作成することでより会社のビジョンを描きやすい計画を作成いたします。また、損益計画では絵に描いた餅にならないよう積み上げ式を原則とし、売り上げにいたるまでの行動管理までを計画化します。
 あわせて、株式の移転時期や後継者様のポジションの時期、創業者様の引退の時期等を織り込むことにより「事業承継計画」も包含した内容となります。

後継者育成、幹部候補育成

 創業者様の経営方針や理念、取引先対応・金融機関対応といったノウハウなどを洗い出し段階的に後継者様への道筋をつけていきます。また、合わせて経営者を支える幹部候補の方々を様々な部署から選出し、横断的な経営の研修を行います。

組織体制・グループ体制改善コンサルティング

 今の組織体制が後継者様にとってやりやすい体制とは限りません。営業や製造部門が強く、管理部門は弱いといった会社は多く存在します。また創業者様もご自分の専門は強くともそれ以外はどういう体制がよいかわからないといったケースも見受けられます。属人的になりがちな会社の機能を分解・整理し、組織体制やグループ会社体制の見直しと体制改善支援を行います。
 ハード的には組織図、職務権限規程、職務分掌規程の作成等の規定類、合併や子会社化の手続き支援・税務検証を、ソフト的には創業者様、後継者様及び経営幹部様へのヒアリングから希望する組織体制のイメージ作りと現実とのすり合わせを行いながら進めていきます。

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